廃案になった境界確定制度とは?

 近々に売買契約を予定しているときは、契約を無事に遂行できるように、最終的な重要事項調査によって取引の安全を図ることが必要です。本節では、「売主による境界の明示」に関する確認調査について述べます。


 筆界特定制度が施行される2年前の、2004年5月28日、「新たな土地境界確定制度の創設に関する要綱案」が法務省から発表されました。一言で言うと、「境界確定制度要綱案」です。

 

 「この制度において,“境界確定”とは,土地の境界が明らかでない場合において,この制度の定めるところにより法務局又は地方法務局の長の指定する登記官が境界を確定することをいうもの」とされ、「土地所有者からの申し出」又は「法務局の地図作成の際に、登記官が必要と認めたとき」に、「筆界及び所有権の境界」を確定させるという画期的なものでした。この制度が法律化されると、全国の境界紛争は一気に解消したでしょう。

 

 これまでの境界紛争の訴訟では、「所有権確認訴訟」と「境界確定訴訟」の2種類がありましたが、これら2種類の境界を登記官職権で定めるものでした。結果は、日の目を見ずに、この「境界確定制度要綱案」は、廃案となりました。その2年後、現在の筆界特定制度が施行され、所有権の境界には関わらずに、筆界のみを定めることとなりました。

 

 

 

2023年02月13日