従来の「自殺等の心理的瑕疵」の特約方法の研究には、無理がありました。
国交省が、ガイドラインを提出しましたが、民事上の裁判には対抗できない旨の補足説明があるため、ガイドラインそのものの法的適合性が疑われます。
多くの学識経験者が、この問題を考察するときは、「宅建業者等が行うべき自殺等の心理的瑕疵の事実の説明すべき範囲、期間」を研究してきました。その結果、「賃貸借契約では3年」という一定の期間を導き出しましたが、「5年前の事件を知っていたのに説明しなかったことは、不法行為責任に基づく損害賠償請求が成立する」として、反対に訴えられることが、十分に、想定されています。
わたくしは、この考察方法自体に問題があると、考えています。
考察すべきは、「説明をすべき範囲、期間」ではなく、反対に、「説明をせずとも、訴訟上、問題のない範囲、期間」の特約です。
例えば、「江戸時代の切り捨て御免の時代の事件」、「明治時代の殺人事件」、「大正、昭和初期の時代の事件」などは、誰が見ても、売主の説明義務を要求する人はいないでしょう。つまり、このような、時代や、範囲を特約するための考察が必要なのです。
そして、裁判官ごとに判断が異なるような曖昧な範囲こそ、取引当事者の合意において特約することが、最も、訴訟リスクが少ない合意事項となります。
具体的には、「昭和20年(終戦年)以前の自殺・他殺・焼死等の事件は、心理的瑕疵(契約内容不適合)には該当しないことを、売主・買主は互いに確認した」という特約が、有効になります。そして、「心理的瑕疵(契約内容不適合)に該当しない事件については説明義務はない」ということになります。
こうすることによって、不法行為責任が成立しなくなります。
不動産情報告知書に、この内容を反映しましたので、ご参照ください。
エスクロー図書館に蔵書しました。
「開発文書・不動産情報告知書2023.7.15土地・古家付土地用」
「開発文書・不動産情報告知書2023.7.15土地・区分建物用」
「開発文書・不動産情報告知書2023.7.15土地・土地建物用」