がけ条例の説明忘れで害賠償1100万円!

 こんな事件がありました。

 

 平成元年5月、藤沢市に居住する医師は、住宅の新築目的で、鎌倉市の土地319㎡を1億1800万円で、資本金200億円の大手不動産会社の仲介により、個人の売主と売買契約を締結しました。

 取引対象地の東側には7m~8mの”がけ”があり、崩れかかった擁壁もありました。

 

 仲介業者は、「本件概算見積書は参考資料にすぎない」旨を重要事項説明した上で、売買契約を締結し、取引が完了しました。

 買主が工事に着手しようとしたところ、「本件概算見積書の擁壁設計案は、建築基準条例に基づく規制に適合しない」そして、「擁壁築造工事は、東側部分だけでなく、南側隣地に属する”がけ”部分をも大幅に削り取る必要があるため、本件土地の東側部分に擁壁を造るのは困難である」と分かりました。

 その結果、「“がけ”条例による建築規制で、擁壁を設置しない場合は、敷地の約半分が建物の敷地に利用できない」ことがわかり、仲介業者を相手に訴訟を起こしました。


 東京高裁は、次のように判決しました。


 「本件土地上に建物を新築する場合、神奈川県建築基準条例第3条(現在の鎌倉市は2m)で3mを超える”がけ”が規制対象となり、”がけ”部分に擁壁を設置しない場合には、東側境界から10ないし11mの範囲に建築制限を受け、”がけ”の高さの2倍を超える範囲にセットバックをしなければならず、本件土地の東側の半分近くの利用が大幅に制限されるか、東側境界付近に大規模で多額の費用を要する擁壁築造工事を施工する必要がある。

 

 本件売買契約に当たり、仲介業者は、買主に対し、重要事項の説明を行ったが、盛土をする場合、宅地造成等規制法による規制がある旨の告知はしたが、その具体的な説明は行わず、また、本件土地につき県建築基準条例(“がけ”条例)に基づく規制があることの説明をしなかった。」

 その結果、「仲介業者には善管注意義務違反による損害賠償責任がある」と判決しました。

 そして、仲介手数料370万円と弁護士費用約100万円を併せた1100万円の買主の損害を認め、仲介業者に支払えと判決しました。(平成12年10月26日、浅生重機裁判長)


 

 

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2024年02月08日